病気やケガをすると薬を使って治療することが多いですが、薬を使わない栄養療法にも注目が集まっています。もともと栄養療法とは、適切な栄養管理のもとで、人が元々持っている自然治癒能力を高めるという考え方で行われるものです。逆にいうと、栄養療法がおろそかになると、他の治療をしても思ったような治療効果が得られない恐れもあるということです。また、栄養状態を良くすることで体の回復機能が早まることから、手術前から栄養療法を行って感染症などの合併症を予防する医療機関も少なくありません。

ところで、医療機関では栄養療法を行うために、NSTを組んでいます。NSTとは、多職種の医療スタッフが協力して低栄養患者の栄養状態を管理する栄養サポートチームの略称です。NSTで中心的な役割を果たすのが、NST専門療法士と呼ばれる人たちになります。NST専門療法士は、日本静脈経腸栄養学会が認定する資格です。NST専門療法士の資格を取得するためには、看護師や薬剤師、管理栄養士など指定された国家資格を取得し、かつ医療現場で5年以上勤務するなどの条件があります。

NST専門療法士の業務内容は、まずNSTの回診に参加することです。そこで患者の栄養状態をチェックして、食事内容などが適切であるかを評価し、問題があれば改善策を検討します。改善策として行うのは、低栄養患者が食事を摂りやすいように、適切な食事形態やテクスチャーを立案したり、口から食事が摂れない患者の場合には、適切な経腸栄養剤を選択したりするなど様々です。そして定期的に開催されるカンファレンスに参加し、他の医療スタッフと情報共有することも大切な業務となります。